国語力「ストーリー性の重要さ」

さて国語力の話をもう少し。
先日、ある申請への応募動機を書きました。
この文章作成の時にも、気づきがありましたよ!
まずは、修正前原稿をごらんください。
 
 

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■修正前原稿
 私は○○大学の大学院で、地球環境と生物進化の関係を明らかにするために研究者を目指しておりましたが、博士課程に入ってから意識変化がありまして、起業家となる事を志すようになりました。その頃から学内外で様々な活動をしてまいりましたが、当時の私は、身近に存在するニーズにしか着眼できず、発想するビジネスプランもその枠を越える事ができませんでした。しかしその後、様々な中小企業の経営者や大企業の技術者、県や市の公務員の方々などと出会う事ができ、知見を深め、視野を広めていく事ができました。その中で私は、人々が生活していくのには何が必要なのか、地域を支えているものは何なのかという事に思いが至るようになりました。
 ちょうどその頃、○○大学△△センター××で助手の募集がありました。本気で起業をするにはまだ修行が必要だと考えていた私は、応募して産学連携に関わってみようと思いました。面接の結果、助手とするには能力が十分ではないが、視野を広げるために半年間のチャンスを頂けることになりました。この××で、国家レベルの課題や現状、地域の施策を勉強する機会を得て、これからの時代は、地域の人々の小さな幸せを守るにも、グローバルに勝負できる産業を作っていかなければならないのだという事に気がつきました。以前の私は、大学のバックグラウンドを投げ捨てて、大学での研究とは全く異なるサービス系の分野で小さな起業を考えていましたが、それは社会にとっても大きな損失であるという事に気がづきました。
 今、私は、大学で培われた技術を、社会に還元していき産業の発展に貢献することこそ社会的使命であるという想いを強くしております。□□に応募することによって、足りない能力を身に付け、この分野で活躍するためのキャリア形成をさせて頂けたらと思い、応募した次第です。

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上記の文章は、自分の想いを素直に時系列的に並べただけの文章でした。自分の主張は全て盛り込んでおり、自分としては完結した文章のつもりでした。しかし、ある人に見せたらダメ出し!そこで指摘されたのは、次のようなポイントです。
 
・抽象的な表現が多くインパクトが弱い。
・「ストーリー性」を重視せよ。
・話に一貫性を持たせるように書け。
・文末で言いたいことは決まっているのだから、そこに筋道をつけるように書く。
・基本的に、ネガティブな表現は使わない。
・聞く側が「ん?」と思うような単語は使わない。
・相手の主張や考え方を事前調査し、相手のよろこびそうな単語・表現を入れるべし。
 
ここで、私が特に印象に残ったのは「ストーリー性」の重要さ。なるほど、こういう文章で求められているのは、事実の記載でもロジカルな表現でもないのです。「ストーリー性」つまり「お話として自然で納得感があるかどうか」なのです!ここでは、自分が何を主張するかよりも、どんなお話が相手にとって納得感があるかが大切とされています。納得感のある文章のためなら、自分の主張を曲げるのも当然ぐらいの勢いです。相手が納得しなければ、そもそも協力も合格も無い、という社会の知恵なのです。
 
う〜む、そういうもんか!?
腑に落ちない感を抱きながらも、学習するところは学習する事にしました。
いろいろなテクを身に着けても損はないですからね。
そうしてできた修正後の文章は以下。
 
 

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■修正後原稿
 私は、○○大学理学部地学系で古海洋環境の研究を行い修士を取得し、進化生態学の研究を行うため生物系の博士課程に進学しました。その後、○○大学△△センター××での研修後、活性酸素の研究で博士課程を取得し、再び××に勤務しております。
 私は大学院で、地球環境と生物進化の関係を明らかにするために研究者を目指しておりました。しかし、博士課程に入ってから意識変化がありまして、起業家となる事を志すようになりました。そのために、学内外でセミナー、勉強会にたずさわり起業準備をしてきましたが、当時の私は、身近に存在するニーズにしか着眼できず、発想するビジネスプランもその枠を越える事ができませんでした。その後、様々な中小企業の経営者や大企業の技術者、県や市の公務員の方々などと出会い、お話をする中で、社会として本当に必要なのは、イノベーションによって世界で勝負できる企業を作り、そこを核として多くの雇用を作り出すこと
であるという事に気がつきました。
 これを実行するには、人脈・シーズ・お金の3つが必要です。この3つを得るためには、産学連携の仕事に従事しながら、経験を積むのが良いだろうと考えました。なぜなら、産学連携の仕事は、研究プロジェクトや既存企業の支援を通じて社会常識や実務的知識を学ぶ事ができますし、学内外に人脈を形成して、起業シーズや支援者、資金提供先まで得られる可能性があるからです。そこで、産学連携で定評のある××で働かせてもらえるようアピールをし、教務補佐員としてチャンスを頂くことができました。途中、バイオの専門性を高めるために研究に戻り、博士課程の卒業を優先し、改めて今年4月から××に雇用された次第で
す。
 私はこの××で、戦略的研究プロジェクトの企画立案を行い、それを実行することで、大学の最先端の研究を産業界につなぐ橋渡しをします。また、IPOを狙えるような大学発ベンチャーの創出を、AA県、BB市、○○経済産業局と連携して促進していきたいと考えています。プロジェクトの企画・実行を通してスキルアップと人脈形成に努め、将来的には、自分自身がバイオ関連分野でのベンチャー設立を行い、社会に貢献していけたら嬉しいと考えております。

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ホント、国語力って必要ですね。
社会では、ロジカルな文書ならOKってわけではないのです。
「ストーリー性」を磨くには、どうしたら良いのだろう?
それこそ小説をたくさん読んだりするのが近道?