サーカス団的ビジネスモデル

うちの近くに、変なラーメン屋ができた。工事現場のように鉄骨とネットを組み上げて、簡単な看板とノボリをつけただけの店だ。こんな店、以前もバイパス沿いで見かけた事がある。気になって近づいてみると「博多長浜ラーメン よかよか」と書いてある。期間限定で各地を移動しながら店舗をやっているらしい。そこは以前、味よしがあった店舗なので、居抜きの形で入っているのだ。
 
なるほど、読めた。ラーメンビジネスが過当競争に入った今の時代、固定店舗でリピートを獲得するよりは、移動式店舗で新規顧客を獲得し続けるほうが、リーズナブルなのだろう。それを可能にするのが、居抜き形態での出店と、簡素だがインパクトのある外装なのだ。これで、固定費が一気に減る。移動し続ける事も可能になる。これはまるでサーカス団みたいだ。
 
ラーメンの市場規模は、推定7,000億円だそうだ(ちなみに、ハンバーガー6,400億円、外食市場全体では31兆円、自動車産業は約40兆円)。ラーメンの粗利は70%ぐらいだから、かなりおいしい業界。今までのように地元店同士の競争から広域競争の時代に突入して、仙台にも、札幌・博多などからぞくぞくと参入が続く。恐らく、このようにラーメンが多様化し、客の嗜好の変化が加速した結果、固定店舗で長く客を通わせるのが、無理になったのだろう。そこで彼らは、移動する事を考えた。客は、新しい店には1、2度足を運ぶ。それが期間限定ならなおさらだ。そうして荒稼ぎして客が味に飽きた頃、次の土地に移る。ネットで調べてみると、「九一麺」という所も、同様のサーカス団的ビジネスモデルを実行しているらしい。これからはこれがメジャーなやり方になるかもしれない。ラーメン国技場は、逆に固定店舗で、ラーメンの種類を常に入れ替えるビジネスモデルだが、客の早い嗜好変化に対応するという発想は同じだ。
 
客の嗜好変化の加速。これはテクノロジーの世界でも言えるのではないだろうか、デジカメにしろパソコンにしろ最近のヒット商品は、1年もたない。商品が多様化し、客の嗜好の変化が加速しているので、ラーメン業界と同じ事が起きているのだ。もちろん技術の進歩が加速しているのも大きな要因。こういう市場では、客は流れ続ける。固定店舗でリピート獲得というビジネスモデルは終わった。サーカス団的ビジネスモデルのように、流れる客に対応したビジネスモデルを立てないといけない。テクノロジーの世界でも、発想の転換が必要だ。では、具体的にどうする?まずは、研究開発の固定費削減を、まじめに考えなきゃいけないだろうな。