うさんくささを越えて

研究者は、常に不確定情報の中にいる。先端の分野ほどそう。
研究の先端では、限られた情報の中から、説を導き出す。したがって、それは当然不完全の説となる。教科書にもっともらしく書いてある事でも、うそは多い。しかし、部外の素人にとっては、そうは見えない。普通の人は、科学は絶対だと思っている。しかし、科学は方法であって、真理そのものではない。
 
研究とは、その不完全な仮説の上に、さらなる仮説を構築していく行為である。論理の矛盾が拡大しすぎてどうしようもなくなると、たまに砂山が崩れるようにガラッとひっくり返る事がある。いわば、砂上の楼閣。世の中にはこれがたくさんある。しかし、そんな砂上の楼閣でも、さらに積み上げれば立派な山となる。崩れながら崩れながら積み上げ続け、やがて本物の城となる。
 
先人は、うさんくささの中を突き進んで、確かな物を作り上げてきた。量子力学しかり、プレートテクトニクス論しかり、半導体しかり、有機ELしかり。
 
 
悪い研究者は、うさんくささに直面し、できない事を「できない」と言って何もしない。
良い研究者は、うさんくささの中で、できない事を「できる」とハッタリ、必死にやって何らかの形にする。