知らない事になっている

世の中には、「知らない事になっている」が多い事に気づく。
イラク大量破壊兵器が無いなんて知らない事になっていたし、社長はリコールの報告書を知らない事になっている。知っていると前提条件が崩れたり、何らかのアクションを起こさなければならくなるので、知らない事にするのだ。戦略的に「知らない事になっている」を使う者もいる。これは、科学の世界でもあるようだ。
 
ある研究所は、ABCの3つの測定ができる技術を扱っているが、なぜかCしか、研究していない。それは、その技術がAB2つの用途には使えないと薄々分かっているから。知れば当然、報告しなければならない。そうやって、ABC3つに使えるという前提条件が崩れると、研究そのものが打ち切られる事を恐れる。そこで、彼らは何も言わずにCだけやる。ABに使えないのは「知らない事になっている」。
 
ある会社のエアコンは、抗酸化エアーを排出し体に良いとうたっている。実際には、抗酸化物質なんか出ちゃいない。たとえ出てるとしても、空気中のそれが人体にどう影響するかなんて分かっちゃいない。カテキン飲料だって、人体にどう効いているのか、実際のところは分かっちゃいない。否定的なデータは、確かめればすぐに出る。しかし確かめない。「知らない事になっている」のだ。
 
「知らない事になっている」は諸悪の根源にしか見えないが、八方塞がりを防ぐ意味では、役に立つのかもしれない。保身のためでなく、行動の理由確保として、使うのだ。行動する事によってブレークスルーが得られる事も多いのだから、これは意味がある。